愚かなる平凡な民

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車のクラクションが五月蝿い。 都会の喧騒があまり好きではない授は重い足取りで信号をわたる。 ケータイがバイブを鳴らしているが鞄から出すのも面倒だと思ったので放置する。 私立西華高校に通う授―桜坂 授(サクラザカ サズク)は自分の生活が好きでは無かった。 家は団地だし、父親の稼ぎも人並み。 受験に成功したものの、成績も中の下。 唯一自慢出来る要素と言えば、すっきりと整った顔だ。自分で言うの何だが、結構イケてると思う。 (世間ではこういう人間をナルシーと言うらしい) その後も宿題や提出物、部活とか色々な事を考えているうちに授の通う高校の重厚な門の前に着いていた。 二時間目の世界史の授業中、授は眠っていた。 ―余りにも生々しい夢だった。 「―ゼウス―…。」 ゼウス? ゼウスってたしか、 全知全能の神とか言うやつ? 授は夢の中で聞いた単語の意味を脳の記憶の中から引きずり出そうとしていた。
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