出生

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私は…生まれた時から違っていた… 肌は紫色で小さな2本の骨が頭皮を貫き 背中からは黒色の羽根… 私を生んだ母と呼ばれる人間は、私を悪魔と呼び、私を崖の上から投げ捨てた… まだ生まれたてで間もないというのにその光景は今でもはっきり脳裏に焼き付いている あぁ…私は母にすら捨てられたのだ… そんな私を救ったのは一羽の大きな烏だった 中空を漂う赤子である私を彼女はその大きな嘴で救ったのである その時私は救われたとは思わず『終った…』と思ったのが今ではただただ懐かしい 烏は私を嘴に優しく咥えたまま人間に捨てられ廃墟となった城に私を連れて行く 城の奥…謁見の間…その中心に位置する深紅の王座に私を下ろすと烏は私の前でその姿を人の物へと変えた   『この時を一日千秋の思いでお待ち申し上げておりました…我らが王よ…』   彼女はそう言うと椅子に座る私の前で跪き頭を垂れる 彼女の話では1000年に1度、人の身体より魔の化身が生まれ出その赤子が次の魔族の王となると言うのである。 なるほど 人並みはずれたこの身体 生まれて間もないと言うのに人語を解せるこの知能 確かに人間ではないと言うのは自分の事ながら直ぐに理解できた。 通常なら理解すると言う事すら不可能な赤子であるにも関わらず私は理解できたのだ
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