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烏の名はミリア…サッキュバスだ…人間達の間では淫魔と呼ばれ快楽夢を見せる代償としてその人間の魂を喰らうと言う魔族…
身体全身に浮かび上がる深紅の刺青、羊を思わせる太く丸い角、そして桃色の唇に美しいブロンドの髪…
人ではないものの、確かに彼女は美しい
気づけば私は既に彼女の虜だったのかもしれない
彼女は私を甲斐甲斐しく育ててくれた
人ではない私は10年と言う短い時間で成人の人間と同じほどの成長を遂げた
魔族の王は10年間で必要な知識を獲得修正し、それから500年間最も力の充実した姿を保ちつづける事で永きに君臨すると言うのだ
昔は布団に近かったこの服も今では私の身体に見事に映える衣装になって居る
無かった髪の毛も今では蒼青の美しい物が腰の長さまで伸びていた
ミリアは私に私を生んだ人間の末路を話した
『王よ…貴方の母親は10年前、魔の使いとして火あぶりの刑に処されました…』
『嘆かわしい事よ…』
私はただただ母に申し訳なく思った
不思議と母には憎悪は無かった
私さえ生まれなければ母は一人の人間として魔女と呼ばれる事も無く生涯を終えたのだから…
ミリアは私を優しく抱きしめ頭を撫でる
『カオス…王よ…貴方は優しすぎる…彼女は貴方を捨てたのです。その人間にすら貴方は慈愛の気持を持っている…』
『ミリア…命は誰の物でも平等なのだ…人も魔族も…草木も…すべてが等しい物なのだ…その命が途絶える事は何よりも悲しい事ではないか…』
『王よ…この世に等しい命など有りません…有りはしないのです…』
私はミリアのこの悲しむ顔を見たくは無かった
だからいつもその場しのぎで『あぁそうだな…』と相槌を打つ
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