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午後11時28分
空座町上空に、1つの人影が合った。
眼鏡をかけ、白い服装に身を包んだ、いかにも真面目そうな青年。
手には光で形どられた弓を持ち、辺りを見渡している。
「…おかしいな、もう出現してもいい頃だけど…」
彼の名は石田雨竜。
200年以上前に滅んだ、滅却師(クインシー)という一族の生き残りだ。
今は、とある商店の店長から要請を受け、虚(ホロウ)という悪霊を討伐しにここへ来ていた。
「もう30分以上過ぎてる…霊圧が消えた様子もないし、ただの観測ミスか?」
石田は、ポケットから携帯(通常とは異なる)を取り出し、電話をかける。
プルルルル…
プルルルル…
プルルルル…
「…故障かな…いつもは一回目のコールで出るのに…」
3度のコールが鳴っても電話に出ない事を確認し、石田は電話を切る。
「しょうがない、今日はこの辺で帰ろう…」
ザッ
背後から足音を聞き、石田は咄嗟に弓を向ける。
そこには、夜に反する白い短髪、夜に溶け込む黒いコートを羽織った長身の男が立っていた。
「…何者だ、君は」
「…“五動隊”第五分隊副隊長、鷲巳鏡之助」
すんなりと自分の素性を明かされた事に、石田は少し戸惑う。
「…随分と軽薄だね、こうも簡単に話してくれるとは思わなかったよ」
男は黙ったまま、背中の鞘から刀を抜いた。
「…破面…ではないね、向こうで新しく選抜された隊長でもなさそうだし…」
石田は弓を消し、男を見る。
「なら、僕はこうするよ」
ザッ
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