<I>#00: 覚    醒

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 2010年、5月3日。俗に「5月病」が世間に蔓延し始める、 なんとなくダルい日。 その日は、何の変哲もない1日だった――はずだった。 「んじゃ、俺こっちやから」 「あいよ。またねー」 「ばいばーい」  普通に友達と無駄話をしながら、帰路につく。 たまに爆笑しながら、いつもの三差路で友達と別れる。 俺―安藤恭也―は、これまた何の変哲もない、単なる “オタク”の関西人である。 俺は今、黄金色の西日を右手に拝みつつ家路を目指していた。 親元を離れて一人暮らしをしているんだけど、 ひと月経っても特にホームシックになる事もなく、 自分って意外と強いんやなぁ、とか思いながら 日常を過ごしていた。  そして、そんな普通の帰り道、 “日常”を“非日常”にすり替える事件は起きた。
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