<I>#00: 覚    醒

3/7

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
 平穏な街に響く悲鳴と、大きな爆音。 「「――っきゃぁああああっ!!」」  振り向いた先は、必ず通る交差点にある銀行だった。軽く爆煙が立ち込めている。 「ずらかるぞ!」  煙の中から現れた、マスクを被ったガタイの良い男たち。  強盗だ。 この光景を見た瞬間、何かに突き動かされるように、強盗に向かって走り出す。 ――今思えば、これがすべての始まりなのだった。 「やめろぉおおお―――――――っ!!」  叫び、走りながらドロップキックを叩き込む。 身体能力にはそこそこ自信があるのだ。 「うぉっ」  吹き飛び、後方に滑る男。 「この坊主ッ!」  もう一人の男は、俺が立ち上がった瞬間にこっちへ向かってきた。右手に握っているのは―― フルーツナイフ。 「うぐ…っ」  男に腹を蹴られて、その場に崩れる。 ――殺(ヤ)られる。本能で察知し、全身が警告を促す。 しかし、身体は言う事を聞かず、 その場に倒れてしまった。 「よくもやりやがったなァ!」  右手が振り下ろされ、ナイフが突き刺さろうとしたそのとき、鼓動の音が大きくなり、  意識が遠のいた。  ――意識が戻った頃には、目の前には焼け焦げた地面と焼死体が3人。 そして、何事もなかったように佇む俺。 「…なんなんや……?」  周りには畏怖の眼差しで俺を見つめる野次馬と、警察に自衛隊。 事態を呑み込むと、俺は途端に怖くなった。 俺は、その場から逃げだすしかなかった。 「逃げたぞ!負え!」  警察が俺を追いかけるが、ンな事知ったこっちゃないと言わんばかりに、 兎に角逃げた。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加