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2010年5月5日。炎の能力に覚醒したその後、
俺は少しずつ犯罪に手を染めたのだった。
まずは万引き。スーパーで欲しい食材を鞄にひとしきり詰めると、
炎の能力でひとっ飛び。
ひったくり。奪いやすそうな原付を狙っては、
能力を使って飛び、鞄を盗み去る。盗んだ鞄からは
財布を抜き取り、残った鞄はどこかに投げ捨てた。
さらに家屋侵入。窓ガラスを豪快に割って侵入し、
食料や売れば金目のものを奪った。
こうして俺は浮浪者として、また犯罪者として、
どんどん名を馳せて行くこととなった。
そんな、好き勝手やって過ごしていたある日のこと。
“あの男”との出会いが訪れた。
「――安藤 恭也くんだね?」
「…そうですけど。なんですか?」
歩み寄る一人の男は、白髪で50代半ばくらいの、
優しい笑顔を浮かべた“おっちゃん”だった。
「私の言う事を聞いてくれれば、誰にも追われないようにしよう」
「……ほんまですか?」
俺は思わず、それに喰い気味に返事をする。
この数日間、俺は警察に追われ続けていた。
ぶっちゃけ、そろそろ逃げるのも疲れてきたところなのだ。
――……人殺しといてなんやねんって感じやけど。
「うむ」
「じゃあまず、どうすれば?」
「私について来て貰おう」
と言われて、思わずおっちゃんに同行する。
先にあったのはSUVタイプのでっかい車。
黒塗りで、つややかな輝きを放っていた。
「すげ……」
「これに乗ってくれたまえ」
全身黒づくめの、さしずめ某鬼ごっこの鬼のような男が
運転席から降りてくると、後部座席の扉を開けてくれた。
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