序章:遙か遠い未来から

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「どしたのー?」 椿は駆け寄り、子供に近付く。 可愛らしい男の子だ。 「あのね、僕の電子猫が降りてこれなくなっちゃったの」 男の子が指差した先には、ペット型ロボとして今人気の電子猫がいた。 枝の上でミューミューと鳴いている。 「あ~、ちょっと待っててね」 椿は鞄を放り投げ、右足の踵で軽く地面を蹴った。 椿が履いている靴は、踵で地面を蹴ると脚力や跳躍力が飛躍的に向上する代物だ。 あっという間に猫がいる枝に近付く。 「ほら、おいで――…」 しかし、椿が手を伸ばすと同時に猫は枝から飛び降り、男の子の腕の中へと飛び込んだ。 「何だ、降りれるじゃない」 椿が不満そうな顔をした時、強い風が吹いた。 ―――――…ミツケタ…… 「え?」 ふいに聞こえた声。 だが、それは幻聴かもしれない。 声が聞こえたような気がした瞬間に、椿はバランスを崩し樹から転落したのだから……。                
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