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椿が目を開くと、浅葱桜が相変わらず咲き誇っていた。
樹から落ちた為に気絶していたらしい。
しかし上体を起こしたところで異変に気付いた。
「……ここ、どこ?」
小高い丘。周囲には家も道路も無い、殺風景な景色。
浅葱桜も、若干小さい気がする。
「……あれ?」
男の子も、閖亞達もいない。
「おっかしいな…」
とりあえず立ち上がり、家を探そうとした。
しかし、動けない。
桜から離れようとすると、足はおろか体がピクリとも動かなくなってしまう。
「何これ!?」
どんなに力を入れても、桜から離れられない。
「どういうことぉ!?
ゆりあーっ!えーりぃ――っ!!」
パニックになっても、状況は何も変わらなかった。
……そしてそのまま、椿は桜の傍で数十年の時を過ごした。
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