一章:浅葱桜の天女様

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椿が目を開くと、浅葱桜が相変わらず咲き誇っていた。 樹から落ちた為に気絶していたらしい。 しかし上体を起こしたところで異変に気付いた。 「……ここ、どこ?」 小高い丘。周囲には家も道路も無い、殺風景な景色。 浅葱桜も、若干小さい気がする。 「……あれ?」 男の子も、閖亞達もいない。 「おっかしいな…」 とりあえず立ち上がり、家を探そうとした。 しかし、動けない。 桜から離れようとすると、足はおろか体がピクリとも動かなくなってしまう。 「何これ!?」 どんなに力を入れても、桜から離れられない。 「どういうことぉ!? ゆりあーっ!えーりぃ――っ!!」 パニックになっても、状況は何も変わらなかった。 ……そしてそのまま、椿は桜の傍で数十年の時を過ごした。                
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