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 映画は二時間のラブストーリーで陳腐なものだったけど、雅美が隣にいるだけで嬉しかった。映画を観た後は、目的もなくお店を渡り歩き、スターバックスで、たわい無い話を何時間もする。雅美はいつも以上にはしゃいでいて、僕のつまらない話もおおいに笑ってくれた。楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去り、気が付いたら、いつもバイトが終わる時間になっている。帰宅途中のサラリーマンや、夏休み中の学生の集団を遠目にみながら、僕は雅美に自分の気持ちをどうきりだそうか、思案する。大きな時計台の近くを通りすぎようとした時、知っている顔が遠目にみえた。相原だ。遠目からでもわかるその綺麗な横顔の隣には四十代前半とおぼしき男性がたっていた。一見親子に見えるその二人の間にはどこか不思議な空気が流れている。急に静かになった僕を不思議に思ったのか、雅美が僕の顔をのぞきこむ。「どうしたの?いきなり黙っちゃって。」話かけられ、我にかえった僕は、相原の事を話した。
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