ところで

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昨日、セイガとトゥエルに言うタイミングを見失ったあの結界のことだった。 ハルが隠し扉に手を当てる。 「…………【解錠】」 ギィ…と扉が開いた。 ちょっと待て、今ハル呪文言ってなかっただろ! どうやら省略したようだ。そんなこと出来るのかって? 普通、出来ない。 (一々唱えんの、めんどくせーし。) えっ、それだけ? 実際、呪文は魔法を発動させる、補助のようなものであるはずだが、別に省略しようなんて誰も思わない。 面倒くさいもここに極まれり。 とか言ってるうちに、ハルは屋根裏の書庫に到着した。 しかし、数々の魔導書には目もくれず、あの結界の前に立つ。 左手で、軽く壁に触れた。 「…………【破棄】。」 その言葉と共に、 ジュワッ… と音がして…… ハルの左手を中心に、壁が蒸発するように消えた。 また、呪文が省略されてしまった……。 本当に、一般常識がどっかへ行っている。 なにはともあれ、壁は消えた。 ハルは迷いなく、その先に足を踏み入れる。 ハルの辞書に、躊躇という言葉は、多分存在していないのだろう。 そこにあったのは。 (へぇー。魔法陣か……) だった。 因みに、魔法陣と召喚円は別物である。 そんなことはどうでも良かった。
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