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「済まない、いけないとは分かっているんだがどうにも錯乱していたみたいだ。でも、もう大丈夫だから」
だから落ち着いてくれと願い請えば、ハッとこちらに気付いて、
「良かった~、リアちゃ~ん」
と抱き付いて来ては、思い知らせるかのように胸を押し付けて来られた。
スリスリと頬を擦(こす)りつけ、「本当に良かった~」と嬉しんでは魔王が勇者に抱きつくなど、この絵面は明らかにおかしくある。
しかし、端から見れば姉妹の触れ合いのようではあり、妹の方が発育が良いのが不自然ではあるがそうは見えよう。……あぁ、不自然極まりない。
いつまでも赤銅メイル越しに怒りの産物を感じてはいられないし、私はテナを離してからこう尋ねる。
「お互いの立場もあるからこれ以上抱きつかれても困る。それに、私は勇者として貴様と話したい事があるのだが、真面目な話をしても良いか?」
「良いよぉ。でもリアちゃんの言葉堅すぎだから、もう少し肩の力を抜いても良いんじゃないかな?」
いや、逆にそっちの方がもう少し気を引き締めて欲しいのだが、今言ったところで変わりそうにもない。
ニコニコした顔をしている魔王相手に真剣な顔でいるのも徒労。そう思った私は気を張るのを止め、普段のような話し方でテナに言う。
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