7人が本棚に入れています
本棚に追加
2つ山を越え、死の池を迂回し、鬱蒼とした赤い森林を通り、断崖絶壁を上り、星の穴に降りては更に奥。
辿り着くだけで何度死に掛けたか分からない危険な道を通り、ついに訪れたのは魔王が住むとされる城である。
世に混沌を、厄災を、疫病を、貧困を、天災を、そして魔物と呼ばれる怪物を蔓延(はびこ)らせる元凶である魔王が、この不気味な城に住んでいるとされる。
あぁ、本当に不気味だ……なにせ、星の穴と呼ばれる日の光が途切れるくらいに深き深き闇の中、それでも薄暗く光洞窟の中だと言うのに。
門がある、表札がある。何故か分からないが機械仕掛けの呼び鈴(インターホン)が存在し、城もあまりでかくはなく聖堂よりも一回り大きいくらい。魔王と呼ばれる者が住んでいるにしては、想像よりも小さ過ぎる。
更に、外装こそ王が住まう城を不気味にしたみたいであるが、建物の中から光が漏れていて辺りの暗さを照らしていた。雨の心配が無いからか、外には魔王の普段着である服が干しっぱなしと。
国を代表して魔王討伐に来た女勇者であるのに、出迎えが険しい道と生活実が溢れる居住地であるとは。……まぁ良い、私は突っ込まない。
鉄格子の門は閉められてはいるけれど、この程度簡単に乗り越えられる。のだが、何故か魔王相手なのに良心が許さず、見たことも無い技術の呼び鈴(インターホン)を押して魔王の出方を待った。
すれば、その呼び鈴から。
最初のコメントを投稿しよう!