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「ハァ……ハァ……ハァ……」
満身創痍。体は一切傷ついていないけど、魔王を追い回すのと剣を振り回すのに酷く疲れた。今は、壁に背を付けて肩で息をするのがやっとである。
それでも、目の前の赤絨毯に倒れる悪の根元(巨乳)をぶっ倒す事が出来た。最終的には剣なんか使わず、ひたすらもみくちゃ合いだった気がするけれど、とにかく勇者は魔王を倒したのだ。
勇者である私に白旗を振った魔王は、今はビクビクと体を震わせては悶え横たわっていて、そちらも荒れた息を整えていた。
魔王であるからとはいえ、この娘の息の根は止めていない。見た目人間と同じような娘で、しかも錯乱した私から可愛らしく逃げ惑う姿を見ては、殺す気も起きない。
王様からは討伐して来いと言われたが、別に今までの悪い所業を全て止めてもらい、これ以上悪さをしない事を約束させれば良いだろう。
だからこれ以上は手を出さず、この娘――――確かテナと言ったかな? が喋れるまで復活するのを待っていたが。
「……止めて…………もう、…………掴まないでぇ……」
なんて言葉を吐くもんだから容赦したく無くなった。何か? 掴む胸すら無い私には分からない苦痛とか、言いたいのか?
勇者の剣はどこだ? 気持ちは変わった、即この娘の首を跳ねてやろうと剣を探したが、ちっ見つからない。運のいい奴だ。
だからこの怒りを壁に八つ当たりして気持ちを紛らわしていたら、やっとの事で落ち着いた魔王が私に言う。
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