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矢弩の視線の先には三人が登った道。小屋へと続く道は彼の背後にあった。
「これだけの事をして、無事を約束しているのですよ?まだ若い貴方達には悪い話ではない筈」
矢弩は提案を受け入れる事を勧めるが、天慈は彼の言葉を遮る様に千本を幾つか撃ち放つ。
矢弩には躱されたが薮に潜む刺客に直撃し、また何かガラスの様な物体が割れる音がした。駆けながら天慈が叫ぶ。
「行けぇっ!!」
体勢が僅かに崩れた隙を付いて司音と忍は駆け抜ける。矢弩は阻もうとするも間合いを詰めた天慈に掴まれ、反対側に投げられた。
「くっ!!」
着地して振り向く。他の刺客達も動いたが、道を阻む天慈の重圧に阻まれて二人を追えない。
「随分と勇ましい…、いや、無謀というべきか」
矢弩は天慈達の行動を、そう評した。
「無謀かどうか試してみようか?」
余裕の表情で天慈は相対する。矢弩は手で指示をした。刺客達は天慈から放射状に散らばった。
<……>
天慈は視界に相手を捉え続ける。散開した刺客を一人足りとも登らせない為に、彼は隙を見せない。
刺客達は次々にナイフを抜いた。普段、使う必要の無い物を抜く。天慈の実力を侮っていない証拠だった。
「後悔しながら地獄に墜ちなさい!」
矢弩の声と共に無数の影が天慈に迫った。
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