刺客

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「…っ!?」 それが命取りだった。見事に絡まる。また骸が飛来するが、それを足元に叩き付けた。直後に見た物は矢弩の足が振り上げられた結果、巻き上がる土埃。 思わず手で土埃を掃おうとするが、ナイフが顔面に迫る。そちらを避けた代償に視界が遮られた。 「ぐぅ…っ」 天慈は耳と気配を頼りに矢弩を追う。微かな音を耳にしたが、絡んだ糸が邪魔だった。 思いきり引っ張ると、また別の音と共に縛りが解けた。 「鬼さんこちら」 小馬鹿にする様な声で矢弩は挑発する。 「オオォッ!!」 飛び掛かろうとするが、足元の亡骸に躓く。崩れた所に投石が額に直撃した。踏み止まるが姿勢は低く、危うく顔をベンチにぶつけかけた。 <火薬のにお…!!> 気付いたが遅い。無情にも爆風と轟音が起こり、一帯は吹き飛んだ。 パラパラと音が鳴る。矢弩が立っていた。彼は残った骸を楯にして爆発から身を守っていた。濃い砂煙が漂っており死体を確認出来ないが、笑みが零れた。 「何とか倒せたな。とんでもない化け物だった…」 激戦を振り返る。精鋭達を瞬殺する豪腕、獣の敏捷性。 「…あの金属音は何だったのだ?」 折れたナイフが気にかかる。ジャケットに傷は入っていたが、傷口はよく見ていない。 しかし彼は仕事に戻る。気掛かりを一度忘れ、逃がした二人を追う為に踵を返した。
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