会合

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二人は急勾配の険しい道を徃く。 走って走って走り続けた。 だが暫くして疲労が出た事と、伏兵を警戒して、歩く事にした。 「今の所、追っ手は来ていないですね」 忍は後ろを確認した。やけに静かだった。周辺から足音も吐息も、何も聞こえない。 「待ち伏せもなさそうですね」 司音は呟く。短期間で彼女は往年の感覚を取り戻していた。周囲の虫や獣等の気配を完全に把握し、人間の気配が無い事から来る確信を得る程に。 「司音さん」 忍が声を掛けた。 「どうしました?」 「司教…、平坂楔斎とはどんな人物ですか?」 忍は、これから相対するであろう男の情報が欲しかった。 「そうですね…。一つの神と教えだけを信じ、目的の為なら思想は問わず…おまけに人を絶望に浸らせるのが好きで、戦いになれば『殺人機械』とでも言いましょうか…。まあ、質の悪い確信犯です」 「そうですか」 忍は軽くお辞儀した。 「…私については聞かないんですか?」 司音は忍に尋ねた。 「『死神の鎌音』って呼ばれていたなら、貴女も優秀な殺人機械だったんでしょう?でも今は、教団を抜けて普通に働く母親。んー…、合法的殺人者だったんですから、かつての罪を問う気は無いですね」 この答えに司音はホッとした。
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