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忍は、また来た道を振り返った。やはり誰も来ない。
ふと気が付いた。麓は明かりがポツリポツリと点在しているが、遥か先は都会の明かりに満ちていた。二人はその美しさを噛み締める。
しかし感慨を吹き飛ばす轟音。
「なっ…!?」
二人は絶句した。煙が立つのは、先程躯を休め、刺客と交戦した辺りだった。
「天慈っ…!!」
忍は相方の名を呟く。同時に、よりによって最も頼りになる、荒事を得意とする人間を失ったという衝撃が襲う。司音も流石に茫然としていた。
「……急ぎましょう」
忍は司音に告げた。
「しかし…」
司音は忍の切り替えの早さに戸惑っていた。
「この仕事に生き死には付き物ですから、自分も天慈も覚悟はしていますが…、彼は簡単には死にませんよ。寧ろ殲滅しているかも知れない」
確信が持てない状況で、相方を信頼している様子に司音は感心した。
「急ぎましょう」
忍は微笑みを携えて語りかけ、司音は頷く。燃え立つ煙を後に、二人は山小屋に向けて駆け出した。
徐々に、しかし確実に司教と人質の下へと近づく。息をやや切らせながらも、ぼんやりと窓から明かりが溢れる小屋に、遂に辿り着いた。
「司音さん、周りには…?」
「気配は小屋に二人だけ。大丈夫」
忍と司音は周囲に誰もいない事を確認し、軽く打ち合わせた。
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