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「お…かあさん…」
鈴子も立ち上がる司音を見て、弱々しく呟く。
「司音さん!まずは貴女を神の下へ!!」
矢弩は獣の様に襲い掛かる。だが楔斎は、高揚した矢弩が気付いていない、何か強大な殺気が迫った事を覚った。
「矢弩!下です!!」
矢弩と司音の間にある床が、爆薬で吹き飛ばしたかの様に爆ぜた。そしてその大量の木片を撒き散らした穴から飛び出したのは、白髪の男。
「なっ!?」
矢弩は混乱した。確かに手榴弾で爆殺した筈の男が、目の前に現れた現実を受け入れられない。
「て、天慈…」
忍が名を呼んだ男は、矢弩の喉仏へ掌を打ち込みつつ、その首を掴み、小屋の壁まで駆け抜け、叩き付けた。
「ば、馬鹿な。何故生きている…」
「久々に使ったんだよ。鬼人(おにびと)の力、『甲身(かっしん)』を!…ああ、さっき床を吹っ飛ばしたのは研究中の技だがね」
「お、鬼人!?まさか、ほんも…」
矢弩が言葉を紡ぎきる前に、首を容赦なく圧し折り、肉塊へと変貌させた。
「死んだのか確認しない貴様は間抜けだが、お蔭でちょっとした始末も出来たから感謝しておこう」
司音は、矢弩の最期を鈴子に見せない様にしていたが、見届けた後、すぐに倒れた。
「おかあさん!」
先程の拒絶は何処へやら、鈴子は司音の心配をしていた。
「何があったかは知らんが、それでも絆は存在するんだな」
天慈は、ボソリと洩らした。
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