会合

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忍の視界には、先程からの激しい争いが映っていた。 楔斎は猛烈な拳の連打を繰り出した後、すかさず右のハイキックを天慈に見舞った。しかし… 〈むぅ!!〉 恐ろしく硬い物体を蹴った感触に驚いた。靴の爪先で蹴った為に足自体への影響は抑えられたが、もし素足なら間違いなく足の指が折れていただろう。 「流石に強い。まるで第一線で活動し続けていた様な」 天慈は推測を述べる。 「…ええ、まあ。しかし力を集約した筈だったのですが…」 「効いているさ。まだこの躯を使いこなしていないからな。何せ本格的に甲身を使うのは……」 楔斎に天慈は回答したが、自分の言葉に引っ掛かる物を感じて少し考えてから続けた。 「……祖父から受けた訓練以来…だな」 楔斎は、本人が無意識かどうかは別にして、過去を避けている印象を懐いた。しかし、この死闘には不要と判断し、思考を切り替える。 〈躯を使いこなしていないという事は、彼は鬼人としては、覚醒して日が浅いという事。能力をもて余してているならば、充分に勝機はある〉 事実、天慈の攻撃は粗かった。彼は武術については型の反復など、それなりに努力はしていたが、その動きは今の身体能力に全く噛み合っていなかった。 〈人間状態のままだと感覚がズレるから、鬼人の状態でも反復練習しとけって言ったのに…〉 実は忍が思った通り、玄衣の力で人間の状態に抑えたまま訓練し続けたのが原因で、技が馴染んでいないだけだった。
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