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電車に揺られ着いた先は片田舎。日は沈み、夜になっていた。三人はタクシーに乗り指定された場所の近くまで移動した。
「山か…」
指定場所は山の中腹にある小屋。そこまでは徒歩である。
「お客さん、本当にこの山を登るんですかい?」
老年に差し掛かる運転手が尋ねた。
「夜道が危ないってのもあるんですがね、最近…この辺りにおかしな連中が出るって評判なんでさぁ」
「おかしな連中?」
運転手の発言に忍は反応した。
「ええ、夜な夜な怪しげな儀式をしているとか…。実際、遠巻きに見ただけなんですが、火が焚かれてたり、現場に出くわして連中に襲われて崖から落ちたけど、奇跡的に怪我が少なくて命からがら逃げた人がいたり…。今じゃ誰も近付かんのでさぁ」
運転手の話を聞き、天慈は少しニヤついた。
「間違いなくおる」
視線の先、黒一色の筈の山に淡い赤が色付いていた。
「運転手さん、お代は払いましたし危ないですから、街にお帰り下さい」
司音が青ざめていた運転手に声を掛けた。
「お…お客さん、一体…」
しかし運転手は言葉を飲み込んだ。三人の顔が覚悟を決めていたのを察し、黙ってその場を離れた。
「さて、往きますかね」
三人は山道に向かった。
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