刺客

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夜の道は不気味だった。傾斜は緩く、地道ながら整備が行き届いていたが、暗さと木陰と梟の囀りが闇をより引き立てていた。 「夜目も大分利くようになりましたね」 忍は司音に呟く。 「ええ」 彼女は返答したが、それっきり無言だった。三人は周囲を警戒しながら進んでいた。 自分達以外の音に、気配に注意を払う。油断すれば命に拘わる為に集中した結果、沈黙が続いた。 少し広い場所に出ると、ベンチがポツンとあった。 「少し休憩しますかね」 天慈の意見に二人は同意し、腰を降ろした。しかし天慈は立ったままである。体力も余裕も三人の中で一番あった。 三人は水分を少し摂り、飴を口に含んだ。糖分が主体で甘く、吸収の早さと疲労回復、携帯性に優れていたからだ。 2リットルの水が入ったペットボトルは天慈の右手の中指にある輪、玄衣(くろぎぬ)に収めている。なお玄衣は、いうなれば…青色の国民的キャラクターのポケットと似たような物である。 「此処までは何もありませんね…。天慈さんも忍さんも大丈夫ですか?」 司音に二人は余裕の顔を見せて答えた。三人とも足場や視界の悪い場所で襲撃されると践んでいたのだが、一向に無く、登山道の入口から小屋まで、ちょうど半分の辺りまで来ていた。 ガサッ 突如、離れた薮から音が鳴った。三人は警戒したが、正体は狸だった。
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