第一話 “終わり”

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立春が過ぎ去ったと思わせぬ気温の中、校門の前に学校中の生徒が道を作るように並んでいる。 そして、その間を歩き学校を後にしていく卒業生。 中にはこうなる事を予想していたのだろうか、普段は持って来ることの無いハンカチで目元を押さえつけ顔を真っ赤にして泣く人もいた。 あー…私かなり泣き顔不細工だから、泣かないようにしよう。 一人心の中で決意する。 とは言うものの、卒業式なんてあと一年も先の話で、その一年の間に学校に愛着が生まれたりしてしまうかもしれないから分からないが。 とりあえず、現時点ではこの学校――澄流(チョウリュウ)高等学校に皆無と言っていい程愛着が無い。湧かないのだ。 部活は入ってはいるが、その部活動に燃えていると云うわけでも無く、特別親しい先生も居ない。 仲の良い友達はいるけど、卒業したら一生会えなくなるなんて事は無いと思うし、それに今の時代携帯電話で人との繋がりを保つこともできる。 卒業したら喋らなくなる訳じゃないし。 と、そんな事を考えているうちに、卒業生はすでに全員校門を出たらしい。 在校生は疎らに自分の教室に帰っていく。
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