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周りを見渡せば、まだ咲く気配すら見せない桜の木。
この花が咲く頃には自分は最上級生――三年生なのかと考えたところで自覚が芽生える訳もなく、桜が後ろで咲き乱れている以外普段の登校と変わらぬ風景しか出てこなかった。
空は快晴とまではいかないながらも、申し訳程度にちりばめられた綿のような雲がゆっくりと風に流されていく。
ぼーっとその様子を立ち止まり、眺めていたらいきなり背中に鈍い刺激が走った。
どんっ
……。
「よう、湊(ミナト)くん黄昏ちゃって。どうしたんだい?」
漫画であればニヤニヤという効果音が確実に付くような表情で、友人の桜依が居る。
桜依と書いて“あい”と読むらしい。
かなり珍しく、最初は名前が読めず困った。
名字も小鳥遊(タカナシ)ときたから、かなり苦労したのを覚えている。
因みに、湊とは私の名前で、くん付けだけどれっきとした女です。
「別にどうもしないよ。ただ、なんか実感湧かないなぁって」
先ほど考えていた事を素直に告げてみる。
「ん?……あぁ、三年になるってことね」
桜依は、主語とかが抜けてる私の言葉も伝わって楽だ。
だからか、付き合いがそれなりに長い……のだと思う。
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