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【麻生 和照(あそう かずてる)】。
それが俺の名前だった。
帰宅部で、昼休みや放課後は、よく仲間と連んで遊んでいる。
登下校のときは、毎日その仲間の内の一人、幼馴染と一緒なのだが、今日だけが違った。
と、そこで気付いた。
携帯を開く。
「今日は先に行ってる…っと」
メールで一言、打ち込んでおく。
俺を待ってて遅刻されたら、申し訳がつかない。
俺は携帯をポケットに入れ、また大きな欠伸をした。
眠い。
しばらく歩いていると、いつも通る小さな公園が見えてきた。
小さな男の子と女の子が、ブランコに座り、小さく揺れていた。
俺は、不審者だと思われることなんか微塵も考えずに、近づいていった。
少し浮かれているんだろうか。
「早起きだな、少年少女」
同時にゆっくりと振り返ると、その表情は少し落ち込んでいるように見えた。
「にぃちゃん、だれ?」
当然である。
俺もこの子たちを知らない。
ちなみに、この質問は想定済みであり、なおかつ本名を名乗る気は、初めからなかった。
「俺か?俺はーー」
やはり、俺は浮かれていた。
なぜなら、少し前まで言うはずのないことを、口にしていたからだ。
「あえて言うならーー」
嫌いだった存在。
「ーー救世主ってやつ?」
女の子が首を傾げる。
「きゅーせーしゅ?」
「へんなやつだな」
男の子は可愛げがない。
だが、二人で手を繋いでブランコに座ってるのを見ると、やはり子どもとは可愛らしいものだ。
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