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「何かあったのか?」
唐突だったかもしれない。
男の子は一度俯いてから、顔をあげてから口を開いた。
「いえで、した」
「かけおちだよっ」
女の子が嬉しそうに笑顔で話を遮ると、男の子は少し恥ずかしそうにしていた。
「おとうさんもおかあさんも、いつもけんかばっかで、りこんするから、おわかれしなくちゃいけなくて、だからふたりでいっしょにぬけだそうって」
「たーくんとわたしね、かけおちなんだよっ」
たーくんとは、おそらく男の子のことだろう。
それにしても、この子達は強かった。
少なくとも、俺よりは。
「そっか。でも、無理せずそのうち帰れよ。腹だって減るだろ?」
「うん…わかってる」
男の子は俯き、女の子は楽しそうに笑っている。
ため息がほろり。
「ちょっと待ってろ」
コンビニまでひとっ走り。
やはり、俺は浮かれていた。
救済だ、なんて、本当に救世主みたいじゃないか。
「ほら。これで今日、明日は保つだろ?」
ビニール袋に、おにぎりや菓子パンを詰め込んで、少年少女に渡した。
不思議そうに中身を見て、少女は喜び、少年は驚いていた。
「にぃちゃん、いいの?」
「救世主だからな」
「わーい!きゅーきゅーしゃ!」
女の子ははしゃいでいた。
「それをいうなら、きゅうせいしゅ、だろ?あのさ、にぃちゃん…ありがと」
男の子も、嬉しそうにしていた。
なんだ、可愛らしいもんじゃないか。
二人の頭を撫でてやった。
「じゃあ、頑張れよ」
手を振って、公園を後にした。
空がそろそろ明るくなり、朝日が顔を出していた。
時刻は06:30。
眠くて、身体がだるい。
「いーひとだったね」
「うん」
少年少女は、おにぎりを一つずつ口にした。
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