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柔らかくて白い、染みひとつない肌に指を添わして真っ直ぐに目を覗き込みたい。
顎を掴んでこちらに向かせてそのまま、ぷくっとした唇を塞ぎたい。
「ねえ、千尋は何を歌うの?」
しびれを切らした弥生が俺の気を引こうと腕を掴んだ。
「弥生、お前が歌えよ。」
本を弥生に押し付けて、目の前のコーラを掴んだ。
え~っと言いながらも乗り気の弥生が歌手の名前を呟きながら本を捲り出すのを確認して、俺は村田朔子の耳元に近付いた。
「なぁ、映画研究部。」
「え?」
ビクリと肩が上がって、反射的にこちらを向いた村田朔子が俺に聞き返す。
振り向いた時にサラリと流れた黒髪から柔らかい香りがして思わず触りたくなる。
「お勧めの映画ないの?」
俺の言葉に軽く首を傾ける。
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