初めての苛立ち

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「行くぞ。」 うん、と頷いて大人しく俺の一歩後ろからついてくる。 これが弥生だったら腕を掴んでしなだれかかってくるだろう。 二人だけで出掛けているのにまるで一緒に歩いている気がしない。 無理矢理手を掴んで隣に並ばせたい。 いや、腰に手を回してギュッと抱いてしまいたい。 でも当の本人は固い表情で後ろから歩いてくるだけ。 俺の事を警戒しているのか? 別に何かしてやろうなんて思ってないぜと言いたい。 どうしたらこいつは笑ってくれるんだろう? 映画は面白かった。 でも、隣が気になって映画は俺の頭の中で上滑りしていく。 エンドロールが終わり切らない内に我慢出来なくなって村田朔子の方を向く。 ぼんやりと画面に目をやる意識をこちらに向けたくて声を掛けた。 「最初に映画の予告あっただろ?」 案の定、突然響いた俺の声に肩をびくっとふるわしてこちらを見て、慌てて頷いた。
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