希望と現実

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日曜日は小雨だった。 紺色のチュニックに白のパンツ、黄色の傘を差して遠慮がちに待ち合わせ場所に近付いてきた村田朔子。 ちょっとギクシャクした足取りがコイツらしい。 見た目は落ち着いていてクールなのに、そのギャップが可笑しい。 「腹減った。」 なんの脈略もなく、ふと口にするとちょっと呆れた顔をして笑う。 「昼御飯食べてないの?」 「朝が遅かったから食べてない。」 「だったら何か食べる?」 食う、と言うと少し悪戯っぽい笑みを浮かべて俺を見る。 「アイスティー、奢ってくれるんだよね?」 前回、俺が勝手に飲んだ事をからかっているらしい。 「良いよ。」 何か仔犬みたいに可愛くて、ちょっかいを出したくなる。 フッと笑った俺に、嬉しそうな顔をして見てくる。
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