おつぎの二歩

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―夢を見た。  そう遠くは無い過去の夢。  忘れることなど出来ない、心身に刻み込まれた記憶。  教室の隅で涙を流す自分の後ろ姿が、酷く脆く見えたのは、気のせいなんかじゃない。  そんな姿が、現在進行形で俺の悩みの種となっている、彼女―織部雪音―と重なった。  夢の中の俺は、今の俺から見ても分かるくらいに、思い詰めている。  必死に教室の壁にコンパスで穴を開けては、消しゴムのカスを詰め込んでいた。  あれ、案外平気なんじゃねぇの?とか思ったのは秘密だ。  あくまでも客観的に現在の俺が、過去の―多分中1のときの―俺を見て思った感想だからな。  当時の俺はさぞ思い詰めていたに違いない。多分。  とにかく、夢の割にはハッキリとした意識の中で、一つだけ、過去の俺の背中を見て思ったことがある。  織部雪音に、これ以上、同じ思いをさせては為らない。
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