3人が本棚に入れています
本棚に追加
―夢を見た。
そう遠くは無い過去の夢。
忘れることなど出来ない、心身に刻み込まれた記憶。
教室の隅で涙を流す自分の後ろ姿が、酷く脆く見えたのは、気のせいなんかじゃない。
そんな姿が、現在進行形で俺の悩みの種となっている、彼女―織部雪音―と重なった。
夢の中の俺は、今の俺から見ても分かるくらいに、思い詰めている。
必死に教室の壁にコンパスで穴を開けては、消しゴムのカスを詰め込んでいた。
あれ、案外平気なんじゃねぇの?とか思ったのは秘密だ。
あくまでも客観的に現在の俺が、過去の―多分中1のときの―俺を見て思った感想だからな。
当時の俺はさぞ思い詰めていたに違いない。多分。
とにかく、夢の割にはハッキリとした意識の中で、一つだけ、過去の俺の背中を見て思ったことがある。
織部雪音に、これ以上、同じ思いをさせては為らない。
最初のコメントを投稿しよう!