はじめの一歩

8/10

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
・・・  教室に戻る道の途中、佐部と屋上に寄った。  日陰になっている場所に腰かける。 「どうするつもりだ一人。気付いたんだろ?」  何が、とは聞かなかった。いや、聞けなかった。  佐部の顔は、本気だ。 「・・・逆に聞くが、佐部はどうするつもりだ、所詮他人の問題だ、俺達が首を突っ込んだところで、何も変わらないかも知れないんだぞ」  それどころか、事態が悪化する可能性もある。 「お前は変わった」  佐部の声は、冷たい。  憤りを必死に抑えているのかも知れない。  佐部の怒りの根源。  織部雪音、彼女はほぼ確実に、 いじめられている。  あの教室の空気。  織部のあの眼差し。  俺がそうだったから。俺は気付いた。  そして、俺を救った佐部が、気付かないわけがない。 「確かに、何も変わらないかもしれないし、こんな正義感は偽善かも知れない。・・・それでも」 「一人(ひとり)にしても、独りにはさせたく無い、か」  俺の時もおなじことを言われた。俺の名前とかけたんだろうな。多分。 俺には絶対に出来ない考えだな。 「お前がそう言うなら、まあいいが。あのクラスの空気は異常だ、根は深いぞ」 「分かってる、とにかく今は織部さんの事を気にかけておいてくれ」  佐部の指示に頷き、俺達は教室に戻った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加