はじめの一歩

9/10
前へ
/14ページ
次へ
 放課後、佐部が織部の周辺のことを洗うというので、独りで帰宅することになった。 「ひとりで帰るのも久しぶりだな」  基本的に佐部と行動してるからな。  オホモダチではないぞ。 「んあ?」  ふと、今歩いているのが、今朝ノートを拾った十字路であることに気付いた。  そういえば、朝はあまり気にしなかったが、なぜノートはここに落ちていた?  織部がいじめを受けていることは、絶対ではないが、可能性は高い。  それが今朝とはまた違う考えを俺にさせる。  ノートが落ちる原因が、事故や過失では無い可能性だって有り得るのだ。 「やっぱりな」  道路を見ると自転車の急ブレーキ痕があった。それもノートを拾った近くに。それだけじゃない。  ノートが落ちていた場所までは見通しも良く、ここを歩いたであろう織部に気付かないはずがない。  故意に自転車でぶつかりにいった可能性だって有り得る。 「まあ、佐部からの連絡を待つか」  とりあえず、憶測の域を出ない内は、何を考えても無駄だ。気長に待つことにして、俺は家路に着いた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加