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「これ、ホントに藤崎さん?」 携帯を覗き込むと同時に、佳代子は目を見張った。 私は内心鼻高々だった。 「亜由も真紀も見なって。すごいよ、これ」 佳代子はひったくるように、私の手から携帯を奪い取った。 「ちょっと。見せるなら佳代子だけにって約束で――」 「ばれなきゃいいんだって」 笑顔を貼り付けたまま、明らかに苛立った声で佳代子が言う。 亜由と真紀が、弁当箱を持ったまま同時に身を乗り出した。 私は携帯を取り戻すのを諦め、素早く教室を見回した。 窓際に机を寄せ合い、弁当を広げている香澄の姿が目に入った。 さやかの冗談に、声を上げて笑っている。 じっと見ていると目が合いそうな気がして、すぐに視線を逸らした。 幸い、香澄の席から携帯の画面は見えない。 それでも、佳代子の声が香澄に聞こえはしないかと気が気でなかった。 携帯を返されると同時に、私は画像が表示されたままの携帯を閉じて、素早く机の中にしまった。 「そんなに慌てなくたって」 佳代子が鼻で笑った。 「でもホントすごいよ、理沙」 「一瞬誰か分かんなかったもん」 気まずくい空気を、亜由と真紀がすかさず取り成した。 「でもなんで化粧してきてないわけ。せっかく理沙が教えてあげたのに」 言いながら、佳代子は卵焼きを摘まんだ箸の先で香澄を指差した。 「学校にしてくるのは、まだ自信がないってさ」 「はあ? しなきゃ上手くならないじゃん」 憤慨する佳代子に、私は黙って肩をすくめた。
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