3人が本棚に入れています
本棚に追加
「これ、ホントに藤崎さん?」
携帯を覗き込むと同時に、佳代子は目を見張った。
私は内心鼻高々だった。
「亜由も真紀も見なって。すごいよ、これ」
佳代子はひったくるように、私の手から携帯を奪い取った。
「ちょっと。見せるなら佳代子だけにって約束で――」
「ばれなきゃいいんだって」
笑顔を貼り付けたまま、明らかに苛立った声で佳代子が言う。
亜由と真紀が、弁当箱を持ったまま同時に身を乗り出した。
私は携帯を取り戻すのを諦め、素早く教室を見回した。
窓際に机を寄せ合い、弁当を広げている香澄の姿が目に入った。
さやかの冗談に、声を上げて笑っている。
じっと見ていると目が合いそうな気がして、すぐに視線を逸らした。
幸い、香澄の席から携帯の画面は見えない。
それでも、佳代子の声が香澄に聞こえはしないかと気が気でなかった。
携帯を返されると同時に、私は画像が表示されたままの携帯を閉じて、素早く机の中にしまった。
「そんなに慌てなくたって」
佳代子が鼻で笑った。
「でもホントすごいよ、理沙」
「一瞬誰か分かんなかったもん」
気まずくい空気を、亜由と真紀がすかさず取り成した。
「でもなんで化粧してきてないわけ。せっかく理沙が教えてあげたのに」
言いながら、佳代子は卵焼きを摘まんだ箸の先で香澄を指差した。
「学校にしてくるのは、まだ自信がないってさ」
「はあ? しなきゃ上手くならないじゃん」
憤慨する佳代子に、私は黙って肩をすくめた。
最初のコメントを投稿しよう!