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私は中学に上がってすぐ、ドラッグストアの安いコスメを買い集めた。
学習机に並ぶコスメを見下ろし、「若いうちから化粧なんてするもんじゃないよ」と母は顔をしかめた。
昨晩。
私は香澄の頬へ乗せたファンデーションを丹念に伸ばしながら、年寄りの説教は聞いておくものだと反省した。
香澄の肌は剥きたてのゆで卵のようにつるんと滑らかで、驚くほど化粧のりがよかった。
私は時間を忘れて化粧に没頭した。
佳代子との約束も、香澄の恋心も、途中からどうでもよくなってしまった。
私が黙々とパフをはたくあいだ、香澄もハチ公像よろしく無言でかしこまっていた。
化粧を終え、机に伏せていた鏡をおもむろに掲げると、香澄の顔いっぱいに笑みが広がった。
同時に、肩からどっと力が抜けた。
心地よい疲労だった。
別れ際、香澄に頼まれてメールアドレスを交換した。
撮った画像を送るためだ。
待ち受けにでもするつもりかとからかうと、香澄は顔を真っ赤にして、今後化粧をするときの手本にするのだと説明した。
まずは週末に挑戦してみる、と。
「困ったらまた教えてあげるよ」
思いがけず出てきた言葉に、私自身が驚いた。
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