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香澄に呼び出しをくらったのは、それから二日後の朝だった。 朝礼が始まるまでのわずかな時間、佳代子の席に集まっておしゃべりというのは一学期から続く暗黙の了解だ。 亜由がドラマの主題歌を携帯の着信音に設定したという話から、ヒロインが優柔不断だの、ライバルの方が美人だのという話に広がり、私はいつ終わるとも知れない話に相槌を打ちながら、そのほとんどを聞き流していた。 少し離れた場所で、香澄が数人のクラスメイトと集まって何やら話しているのが見えた。 深刻な顔で頷きながら、時折ちらちらとこちらを盗み見る。 ドラマの内容より、香澄たちが何を話しているかの方が気になった。 やがて香澄は一人でグループを抜け、私のもとへと歩み寄った。 途中呼び止められて後ろを振り向き、大丈夫というように首を振るのを、私は視界の端で捕えていた。 「片瀬さん、ちょっといいかな」 「どうしたの」 私だけでなく、周りの三人も口を止めて香澄に注目した。 佳代子など、睨んでいると言ってもいい。 香澄は制服の袖をぎゅっと握り締め、ここじゃちょっと、と蚊の鳴くような声で呟いた。 屋上へ続く階段を上る途中、香澄は一言も発することなく、私を振り返ろうともしなかった。 完全に香澄のペースだ。
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