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「片瀬さんって、北原君と仲いいんだ」 「ちょっと待ってよ、何でそうなるの」 「だって、呼び捨てにするくらいだから」 「北原とは去年も同じクラスだったからね。顔を合わせれば話くらいはするけど、別に仲がいいってわけじゃないよ」 香澄はそうと頷いただけだった。 言外にもういいよと言われた気がして、私は香澄より、必死に弁明した自分に腹が立った。 「呼び捨てだからって仲がいいとは限らないよ。藤崎さんがお堅いだけで」 薄笑いを浮かべて言うと、香澄は赤い顔をさらに赤くして俯いた。 「北原のどこが好きなの?」 香澄は首を傾げるようにして、優しいところかな、と呟いた。 「部活が終わったあと、教室に戻って机を並べてたら、北原君が忘れ物を取りに戻って来たの。一人で何してるのって訊かれたから、机並べてるのって答えたら、何も言わずに手伝ってくれて……」 「惚れちゃったんだ」 「うん」 「あの北原がねえ。ていうか藤崎さん何してんの」 香澄は恥ずかしそうに俯いた。 「教卓から綺麗な教室を見渡したときの達成感っていうのかな。あれが気持ちよくて」 一人教室で満足げな笑みを浮かべる香澄を想像して、私は笑ってしまった。 香澄はともかく、北原が机を並べる姿は想像がつかない。 そもそも、本当に忘れ物だったのだろうか。 休憩のつもりでわざと教室に忘れ物をしていくくらいのことはしそうに思えた。 香澄を手伝ったのも、休憩の延長をと考えれば納得がいく。
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