‐プロローグ‐

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深夜、町に雨が激しく降り注いでる。 雨がすべての音をかき消し、雨音以外何も聞こえない。 どしゃ降りの町中を、1人の白衣を着た男が歩いていた。傘を指し、靴が濡れて重くなった足を引きずりように歩いてる。 「しゃ…むい…よう…。しゃ…むい…よう…。」 どこからか声が聞こえ、男は立ち止まってまわりを見渡す。 近くに電柱が立っており、電灯が付いてそこだけ明るい。 灯りに照らされた黄緑色の球体を男は見つけ歩み寄る。 「しゃ…むい…よう…。」男が聞いたのと同じ声だった。テニスボール程度のサイズの黄緑色の球体で、小さな突起物のような足、髪の毛のように柔らかいトゲを持ち、これがいわゆる「ボテン君」と呼ばれる生物である。 打ち付ける雨の痛みと寒さに凍えている。全身にはアザや切り傷が見え、このボテンは人間から虐待を受け捨てられたのだと男は悟り、ポケットからハンカチを取出して小さなボテンを包み、おにぎりを握るような形で軽く揉む。寒さによる震えが治まると寝息が聞こえて来る。 男はそれを胸ポケットにしまうと再び歩き出す。 「こんな可愛いボテン君を…。思い知らせてやる。」そうつぶやき、夜の闇へと消えて行く。これが、白衣の男とボテン達による戦争のきっかけである。 この日から1ヶ月後、男に拾われたボテンは元飼い主の少年とその家族をたった1匹で惨殺する事件が起こる。
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