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そして今。私、安藤りんごはいつもと同じように、物理部に足を運んでいる途中だった。
体育館横のたんぽぽ小道を通りぬけ、部室棟のさびれきった階段をあがり、廊下をつっきってようやく部室前。
部室の中からは、話し声が聞こえてくる。私のよく知る声だ。今日はまぐろくんたち、先に来てるんだな。そう思いつつドアノブをひねって中に入……
「こんにち――…………
すいません部屋まちがえました」
ソッコーでドアを閉めた。本当に部屋をまちがえたわけではない。部室の中に変なモノが見えた気がしたからだ。
いや、今のはたぶん見間違い。数秒間の思考の末、私はそう結論づけた。再びドアを開ける。
ガチャ
恐る恐る中をのぞいてみる。いたのは2人。1人目は、紫の髪の、目が隠れるほど前髪の長い男子。私の幼なじみにして物理部メンバーの1人、佐々木まぐろくんだ。
彼は楽しそうに話をしていた。話し相手は……
え、『安藤りんご』?
再びドアを閉める。
見間違いじゃないよおおおお!ここここれはまさか自分のニセモノ登場とかいう奴ですか!この後『本物の安藤りんごはこの私だよ』的な展開がまってるんですか!
……いや。冷静に考えてみるとそれは無理だ。なぜなら、さきほどの安藤りんごは顔や髪型、格好などは私にそっくりだけども、決定的に見分けのつく部分があったからだ。
『まっ黒』なのだ。まるで頭から墨でもかぶったみたいに、彼女の顔も、手足も、制服も、ぜーんぶまとめてまっ黒。いったい何が起こってるんだ??
考えても答えは出なかった。よし、このままではラチがあかないし、とにかく中に入って、まずは佐々木まぐろくんに事情を聞いてみよう。
私は三たびドアを開
「もうりんごちゃんたら、どーして入って来ないの~?」
「うわ、わわわわ!?」
出たーー黒い私!むしろ向こうからお出迎えに上がるたあいい度胸してますなあ!とか言ってる場合じゃない!
完全にふいをつかれた私に追い打ちをかけるがごとく、黒い私はとんでもないセリフをさらっと言い放った。
「ねーりんごちゃん、僕今ヒマなんだよね。だからちょっとカラダを提供してよ!」
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