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『あっ、ごめんね祈里。入学早々悪いんだけど……今日早退して来てくれる?』
母は妙に深刻な声色をした。
わたしは生唾を飲む。
「お姉ちゃんに何かあったの?」
『ううん。ああ、今、お父さんと相手方に詫びに行ってるんだけど……』
「…」
『お父さんが頭を下げてね、まあ何とかなりそうよ』
母の言葉に安堵する。
母は続けて言った。
『今、隣町にいるんだけど。家に大切な書類を忘れて来ちゃったから、取って来てくれる?』
「うん。もう学校も終わりだから、すぐに行くよ」
わたしは明るく返した。
お願いね、と母はいつもの調子で行って、電話を切った。
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