好転。

2/23
前へ
/318ページ
次へ
『あっ、ごめんね祈里。入学早々悪いんだけど……今日早退して来てくれる?』 母は妙に深刻な声色をした。 わたしは生唾を飲む。 「お姉ちゃんに何かあったの?」 『ううん。ああ、今、お父さんと相手方に詫びに行ってるんだけど……』 「…」 『お父さんが頭を下げてね、まあ何とかなりそうよ』 母の言葉に安堵する。 母は続けて言った。 『今、隣町にいるんだけど。家に大切な書類を忘れて来ちゃったから、取って来てくれる?』 「うん。もう学校も終わりだから、すぐに行くよ」 わたしは明るく返した。 お願いね、と母はいつもの調子で行って、電話を切った。
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1843人が本棚に入れています
本棚に追加