1843人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あの…あの…」
わたしは男に向かって紙を突き出した。
男は それに気づき、わたしの前にやって来た。
「すまない」
男は淡白な声で言った。
わたしは緊張して、とりあえず首を縦に数回振った。
男は気にせず、紙を受け取ると それを確認する。
「…良かった。ちゃんとある」
この町は、大きなビルがたくさん立ってるし、おそらく彼はビジネスマンの一味だろう。
20代…前半ぐらいだろうか?
若々しい顔立ちに不釣り合いな貫禄が微かにある。
「良かったです…、今日は風が強いので…気をつけてくださいね…」
ふにゃあっと、ぎこちなく笑ってみた。
男は黙ったまま わたしに注目する。
わたしは更に萎縮する。
「…泣いてるのか?」
男は言った。
最初のコメントを投稿しよう!