好転。

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「あ、あの…あの…」 わたしは男に向かって紙を突き出した。 男は それに気づき、わたしの前にやって来た。 「すまない」 男は淡白な声で言った。 わたしは緊張して、とりあえず首を縦に数回振った。 男は気にせず、紙を受け取ると それを確認する。 「…良かった。ちゃんとある」 この町は、大きなビルがたくさん立ってるし、おそらく彼はビジネスマンの一味だろう。 20代…前半ぐらいだろうか? 若々しい顔立ちに不釣り合いな貫禄が微かにある。 「良かったです…、今日は風が強いので…気をつけてくださいね…」 ふにゃあっと、ぎこちなく笑ってみた。 男は黙ったまま わたしに注目する。 わたしは更に萎縮する。 「…泣いてるのか?」 男は言った。
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