23ー(2).

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─────……… 人とは、何をきっかけにして変わるのかはわからない。 昨日まで遠巻きに見ていた者が隣にいたり、話しかけてきたりして、自分自身でさえ、存在する場所が変化する。 現に今、私の周り変化した。 きっかけはおそらく、沖田とのあの試合だろう。 あそこまで隊士に近づいた上、良い試合をして私の存在を示した。 さらに、体術の指導をしてほしいと懇願され、それが近藤の耳に入り近藤直々に頼まれてしまった。 もちろん、断れるはずがない。 次の日から剣術の稽古を早めに切り上げ、残りの時間を体術の稽古に充てることとなり、私もついに剣を学ぶ羽目になった。 基本から教えてもらい、今はまだ、ひたすら木刀を振っている。 そういうことで、隊士にあまり関わるなと言われていたが、それももう撤廃なのだろう。 一応医師なので離れに変わりはないが、食事は大広間で共に食べている。 毎度毎度座る位置を変えるのは勘弁してほしいが、それでも一人で食べるよりは楽しい。 壬生浪士組に来て、ようやく馴染みはじめた気がした。 「おっ、今日は俺の隣か、朔」 「みたいだね、永倉さん」 「で、向かいには左之、反対側は……平助な」 九月十三日、朝餉の時間。 野口と共に作った朝食を並べ、やって来た、近頃よく話す隊士の一団に示された場所に座る。 ナメられているのか、親しまれているのかわからないが、この光景を嬉しげに笑みを浮かべて見る野口の姿を見れば、悪いことではないようだ。 こうして揃うのを待っていると、原田が朝には相応しくない色気を放ちながらやって来た。 彼は私の姿に気づくと片手を上げ、そのまま真向かいの席についた。
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