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「もしも幕末に行けたなら、陽菜、オレは君の願いを必ず叶えるよ。…………なんてね」 劇の王子様のような台詞を小さく吐き出してみて、改めてその不可能さを痛感した。 乾いた笑いが口をついて出て、私はついに紙を折り畳み最後のページに挟み直して本を閉じた。 教授とご飯というのは嘘ではなく、約束の時間まで残り三十分。 機械を止めてそろそろ出発しなくてはとプラネタリウムの中へ再び足を踏み入れた。 天井には未だに星々が映し出されていた。 ゆっくりと先ほど座っていた席まで歩き、カバンを手に取ると機械の電源を切った。 部屋は一瞬にして真っ暗になったが、非常口のランプが暗闇に浮かび上がっているので出口は確認できる。 足元に注意して出口へ歩き出したその時、電源を切ったはずの機械の作動音が聞こえた。 「えっ───」 見ると電源ランプは起動中を表していた。 私は顔を上げ、天井を見上げた。 そこには通常なら煌めく星々がある……はずなのだが、代わりに真っ白な人影が映っていた。 隣の機械に再び視線をやったがこの中に人が入れるはずもなく、不気味に思いながらももう一度電源を切ろうと試みた。 起動中からOFFの状態を表すランプがしっかりと点灯し、小さく息を吐いたが、見上げた先の天井には未だに真っ白な人影が映っている。
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