13.

3/18
前へ
/782ページ
次へ
「おい、なんで障子を押さえてんだ?」 「いやぁ、寝間着が汗びっしょりで、現在上半身裸。そんなみっともない姿を見せれるわけないだろ」 「んなもん、稽古で汗びっしょりになって、井戸で水浴びしている隊士を毎日見てるんだから気にすんな」 「……とにかく、まだ太陽とご挨拶したくないから、障子は絶対に開けるなよ」 「はいはい、わかりましたよ。朝餉はここに置いとくからな」 「ありがとう」 原田は持っていた朝ご飯を廊下に置くと、私のいる部屋を一瞥して去っていった。 私は彼の影が消えるのを確認すると、そっと障子を開けて廊下を見渡した。 人の姿はどこにも見当たらなかった。 ──危なかった……。さすがに、こんな恰好を見られるわけにもいかないしね。 私は視線を下に向けた。 原田に言ったとおり、上半身はほぼ裸……と言うか、さらしだけしか巻いていない。 あまりの暑さに、いつの間にか寝間着が肌蹴ていたようだ。 青白い肌が日の光を受け、余計に血の気が失せたように見える。 廊下に置かれた料理を室内に運び入れ、着替えてから朝食をとった。 今日の朝食の担当は原田なので、少しは安心して食べ始められた。 なぜ作った人が判るのかと言えば……この部屋へ届けに来る人がその日の当番であるからだ。 壬生浪士組ではローテーションで日々の家事──雑用をこなしている。 それを私がすればいいのだが……いつも眉間にしわを寄せている、ある人が許してくれないのだ。 また、彼は私にこの部屋──壬生浪士組屯所の隅にある離れを与えた。 その理由として、医師が病気になったらたまらない、と近藤が言っていたが、彼がそう言う前に、そのある人がなにかを言いかけていた。 それを、近藤が慌てて口を塞いだのだ。 ──どうせ、この異様な見た目のオレを、隊士たちに極力見せたくなかったんだろうね。
/782ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3491人が本棚に入れています
本棚に追加