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「おい、なんで障子を押さえてんだ?」
「いやぁ、寝間着が汗びっしょりで、現在上半身裸。そんなみっともない姿を見せれるわけないだろ」
「んなもん、稽古で汗びっしょりになって、井戸で水浴びしている隊士を毎日見てるんだから気にすんな」
「……とにかく、まだ太陽とご挨拶したくないから、障子は絶対に開けるなよ」
「はいはい、わかりましたよ。朝餉はここに置いとくからな」
「ありがとう」
原田は持っていた朝ご飯を廊下に置くと、私のいる部屋を一瞥して去っていった。
私は彼の影が消えるのを確認すると、そっと障子を開けて廊下を見渡した。
人の姿はどこにも見当たらなかった。
──危なかった……。さすがに、こんな恰好を見られるわけにもいかないしね。
私は視線を下に向けた。
原田に言ったとおり、上半身はほぼ裸……と言うか、さらしだけしか巻いていない。
あまりの暑さに、いつの間にか寝間着が肌蹴ていたようだ。
青白い肌が日の光を受け、余計に血の気が失せたように見える。
廊下に置かれた料理を室内に運び入れ、着替えてから朝食をとった。
今日の朝食の担当は原田なので、少しは安心して食べ始められた。
なぜ作った人が判るのかと言えば……この部屋へ届けに来る人がその日の当番であるからだ。
壬生浪士組ではローテーションで日々の家事──雑用をこなしている。
それを私がすればいいのだが……いつも眉間にしわを寄せている、ある人が許してくれないのだ。
また、彼は私にこの部屋──壬生浪士組屯所の隅にある離れを与えた。
その理由として、医師が病気になったらたまらない、と近藤が言っていたが、彼がそう言う前に、そのある人がなにかを言いかけていた。
それを、近藤が慌てて口を塞いだのだ。
──どうせ、この異様な見た目のオレを、隊士たちに極力見せたくなかったんだろうね。
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