13.

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あれから、ご飯はここで、一人で食べている。 持ってくるのは私の秘密を知っている幹部のみ。 日中はたまにぶらりと屯所内を歩いているが、外へ出たことはない。 隊士たちを見かけることもあるが、彼らは嫌悪の眼差しをしないながらも遠巻きに私を見る。 なので、私はほぼこの部屋に引きこもり、一日をぼーっと過ごしている。 離れは私の身長ほどの塀に囲まれているので、余計に私が異質であることを感じさせられる。 しかし、そのおかげで、女だとバレる確率は低いのだが……。 そうこうしていると、どたどたと走る音が聞こえてきた。 それはだんだんと大きくなり、すぐそこで止まった。 部屋の障子へ視線をやれば、大きな影が一つ、映し出されていた。 それは私の許可もなしに、遠慮なく盛大に障子を開けた。 そこには、体格のいい、浅黒い肌をした男がいた。 「朔、食いモン余ってねぇか?」 「余ってるけど……」 「んじゃ、それいただき!」 「その前に!永倉さん、なにか一言足りてない」 「…………いただきます?」 「あんたの記憶は一日しか保たないのか?」 部屋に飛び込んできそうだった男──永倉を制止させて訊いた。 しかし、欲しかった返答とはまるで違い、呆れたため息が口から出た。 永倉はそれを「もういい」の了承ととったようで、さっと私の目の前に腰を下ろすと、残っていた料理を食べ始めた。 彼は永倉新八。 私の秘密を知る数少ない人物で、副長助勤という役職の幹部の一人だ。 私が命名した“騒音トリオ”のリーダーでもある。 肩幅のある体に浅黒い肌、常識をわきまえず猪突猛進な彼は、食事が終わりそうなときに必ずこうしてやってくる。 私が少食なのをいいことに、残り物をいただこうという魂胆なようだ。 そして、いつも障子を勝手に開けては中に入り込み、こうして堂々と目の前で食べる。 昨日の夜も「一言“入ります”を言え」と私の余りを食べ始めようとした彼に教えたはずなのだが……すっかり頭から抜けているらしい。 私はがつがつ食べる彼の様子に再びため息をつき、部屋の入り口へ視線をやった。 案の定、そこには彼に巻き込まれてここまで連れてこられた小柄な男がいた。
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