3491人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぎゃっ!!……新八さん、僕巡察だからもう行くよ?」
「おお、平助。巡察なら体力つけなきゃな。ほらっ」
永倉は、そう言って私の残した漬け物を小柄な男──藤堂平助に差し出した。
体力をつけろと言うのなら、現在永倉が食べている、その焼き魚でもあげればいいのでは……?と、再び呆れた眼差しで彼を見た。
藤堂も、明らかに馬鹿にしたようなため息をついた。
彼は藤堂平助。
永倉同様、私の秘密を知る副長助勤の一人で、騒音トリオの巻き込まれ役兼からかわれ役だ。
永倉とは正反対で、小柄な体にきめ細やかな美白の肌を持ち、女の子のような見た目をしている。
女装すれば、完全に女だ。
人見知りが激しく、こんな見た目の私と目が合うと、いまだに悲鳴を上げる。
彼はいつも永倉の行動に巻き込まれ、からかわれ……今回もこうして、私の部屋までちゃっかり来てしまっている。
哀れに思う反面、悲鳴を上げる彼のへたれさ加減に呆れもしている。
「おーい、平助。隊士が門で待ってるぞ」
「やべっ!!新八さん、僕もう本当に行くからね」
「おお、京の平和を守ってこいよ、平助ちゃん」
「ちゃん付けするな!」
魚の尻尾が口から飛び出している姿で、永倉は口元をにやりと上げた。
その間抜けな格好に藤堂は呆れつつ、しかしちゃんとツッコミはして部屋の前から姿を消した。
それと入れ替わりに、朝、部屋に朝食を届けに来た原田が再び姿を現した。
「やっぱりここに来てたのか、新八」
「よお、左之。飯はあげねぇぞ」
「いらねぇよ。それより、運んできた分くらいは食べ切れよ。そんなに顔色悪いんだ、栄養足りねぇんだろ」
「……これはもとからだ」
最初のコメントを投稿しよう!