13.

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縁側に置いてある下駄を履き、庭に下りた。 藍色の着物が太陽の熱を吸収していく。 離れの庭を塀沿いに歩き、途切れた部分から屯所内へ出た。 左の奥には戸口があり、いわゆる裏口のようなもので、そこから外の通りへ出ることができる。 私はそちらへは向かわず、正面に見えるそれなりに大きな建物──母屋へと足を運んだ。 母屋に着くまでには広場のような場所があり、そこからは主に四つの方面へ行ける。 一つは私が住む離れのある方。 一つは母屋や正門のある方。 一つは蔵が立ち並ぶ方。 そして最後の一つは隊士たちが稽古をする、道場がある方だ。 蔵は離れの横に立ち並び、この屯所の奥の方まで続いている。 道場は正門前の通りに面したところにあり、この広場まで来ると、微かに彼らの元気な声が聞こえてくる。 今も素振りを数える声が聞こえ、青春、という単語が頭に浮かんだ。 あの陽菜が、なぜあんなにも剣道に打ち込んでいたのかが、今になってようやくはっきりと理解できた。 私は蔵や道場の方へは回らず、母屋へ直行した。 母屋もまた、低い塀で囲まれており、途切れた部分から入った。 離れと似たような中庭を堂々と歩き、青々と茂る大木まで来ると、太陽から逃れるようにその下に隠れた。 京都の夏はかなり暑い、と以前、なにかの授業の際に聞いていた。 盆地のため、湿度も高いそうだ。 夏はサウナみたいぞ、と汗をかきながら小太りな先生が教えてくれた気がする。 この世界へ来たのが六月で、季節は夏へと移行し、暑いとは思っていたが、こんな男所帯の場所へ来たからか、余計に暑く感じる。 「あれ、朔君。こんなところでどうしたのですか?」 「顔色が優れないみたいだけど、大丈夫かい?」 「……おはようございます、近藤局長、山南さん。この顔色は元からなので、ご心配なさらず」
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