13.

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山南敬介は壬生浪士組の副長だ。 近藤の下、原田ら副長助勤の上の役を担っている。 穏やかな人柄で思慮深く、隊士たちの間では“仏の副長”と呼ばれているらしい。 それほどまでに温かみのある人なのだが、私には冷めた態度しかとらない。 その理由は解っている。 彼は極力私に関わりたくなく、私を新撰組に関わらせたくないのだ。 未来を知る、危険因子だから。 そのため、彼はいつも監視するような、感情の籠もっていない目で私を見てくる。 近藤と山南がやって来た方向へ進んでいると、近くで怒号が聞こえた。 同時に、数メートルほど先にある障子が勢い良く開き、愉快そうに笑いながら沖田が出てきた。 彼は私を見つけるとこちらにやって来て、私を盾にするように背に隠れた。 嫌な予感がして障子へ視線を戻すと、そこには鬼の形相でこちらを睨んでくる土方がいた。 手にはなにやら、物騒なものを握っている。 「総司、今日という今日は叩きのめしてやる」 「嫌ですよー。朔君が僕を守ってくれるそうなので、朔君と殺り合ってください」 「はあ?!」 「おい、銀髪。総司の側に付くってんなら、容赦しねぇぞ」 「いつオレが、沖田さんの味方になるって言ったんだよ!おい、沖田さん。今日はなにしたんだよ」 「いえね、あまりにも退屈だったので、土方さんのお仕事のお手伝いでも、と」 「…………で、手伝うと言うよりも、邪魔したわけね」 「僕はちゃんと手伝いました!」 「あー、はいはい」 背後でぷくっ、と可愛らしく頬を膨らまして怒る沖田を軽くあしらい、私はゆっくりと近づいてくる鬼の対処法を考えていた。 彼、沖田総司は副長助勤であり、私の秘密を知る幹部の一人だ。 前の世界で、陽菜が彼のことについてよく話していた。 新撰組一番隊組長。 組内で一、二を争う剣客。 その美貌は男女とも魅了する。
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