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山南敬介は壬生浪士組の副長だ。
近藤の下、原田ら副長助勤の上の役を担っている。
穏やかな人柄で思慮深く、隊士たちの間では“仏の副長”と呼ばれているらしい。
それほどまでに温かみのある人なのだが、私には冷めた態度しかとらない。
その理由は解っている。
彼は極力私に関わりたくなく、私を新撰組に関わらせたくないのだ。
未来を知る、危険因子だから。
そのため、彼はいつも監視するような、感情の籠もっていない目で私を見てくる。
近藤と山南がやって来た方向へ進んでいると、近くで怒号が聞こえた。
同時に、数メートルほど先にある障子が勢い良く開き、愉快そうに笑いながら沖田が出てきた。
彼は私を見つけるとこちらにやって来て、私を盾にするように背に隠れた。
嫌な予感がして障子へ視線を戻すと、そこには鬼の形相でこちらを睨んでくる土方がいた。
手にはなにやら、物騒なものを握っている。
「総司、今日という今日は叩きのめしてやる」
「嫌ですよー。朔君が僕を守ってくれるそうなので、朔君と殺り合ってください」
「はあ?!」
「おい、銀髪。総司の側に付くってんなら、容赦しねぇぞ」
「いつオレが、沖田さんの味方になるって言ったんだよ!おい、沖田さん。今日はなにしたんだよ」
「いえね、あまりにも退屈だったので、土方さんのお仕事のお手伝いでも、と」
「…………で、手伝うと言うよりも、邪魔したわけね」
「僕はちゃんと手伝いました!」
「あー、はいはい」
背後でぷくっ、と可愛らしく頬を膨らまして怒る沖田を軽くあしらい、私はゆっくりと近づいてくる鬼の対処法を考えていた。
彼、沖田総司は副長助勤であり、私の秘密を知る幹部の一人だ。
前の世界で、陽菜が彼のことについてよく話していた。
新撰組一番隊組長。
組内で一、二を争う剣客。
その美貌は男女とも魅了する。
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