13.

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土方は私たちとの距離を二メートルほどあけて立ち止まり、眉間のしわを深くして睨んできた。 これが一般人なら、蛇に睨まれた蛙状態だ。 「ほらっ、朔君早く」 「……人の世の、ものとは見え───」 「てめえらぁぁぁあああ!!」 土方を鎮めるという魔法の言葉は、言い切ることなく効力も発さずに終わった。 土方の額に青筋が浮かび上がり、容赦なく手に握られているモノが振り下ろされた。 危ない、と思って沖田に声をかけようと思えば、いつの間にか逃げたのか、すでに姿はなかった。 私は反射的にその刀を避け、土方と距離を置いた。 ──…………これ、完全に逆効果じゃん!沖田さん、次はオレで遊んだな。 逃げながらほくそ笑んでいる沖田が目に浮かび、いつか仕返ししてやる、と心に決めるも、この状況から抜け出せない限り私に明日はない、と悟った。 怒りで我を忘れていそうな土方をどう止めるかなど、私が知る由もない。 ついに斬りかかってきた彼の刃から逃れようとしたが、ふと逃げる意味を見失った。 私は新撰組を守ると言い、たとえそれが仲間内の喧嘩でも、傷つくのは守れなかったも同然だろうと思ったのだ。 それに、斬られただけじゃ私は死なない。 逃げようとした体の動きを止め、ぎゅっと目を瞑った。 刀はすぐそこまでやってきていた。 ……しかし、いつまで経っても体に刃が喰い込まない。 あの、焼けるように熱い痛みもない。 そっと目を開けてみれば、刀を鞘に納めている土方が目に入った。 彼の顔からは青筋も消え、眉間のしわがいつも通り不機嫌そうにあった。 「お前、総司に教えられたことは忘れろ」 「なんで?」 「忘れろ。いいな?」 「……はい」
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