13.

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有無を言わせないその迫力に、私は首を縦に振った。 土方は先ほど障子を開いた部屋へ戻り、私も、彼の後に従って母屋の彼の部屋へ入った。 土方歳三。 山南と同じく壬生浪士組の副長だ。 仏の副長に対し、こちらは鬼の副長として隊士から恐れられている。 それもそのはず、彼はいつも眉間にしわを寄せ、口調も荒っぽい。 しかし、一方でその端正な顔立ちは女ウケし、美男子の名に相応しい。 彼の名も、陽菜の口から出た覚えがある。 土方歳三は、新撰組を最後まで背負い、支え、そして果てた人物だと。 今のこの状況では、それが本当のことなのかは理解しがたい。 いや、そうしないために私がここへ来たのだが……。 「で、なんでお前も俺の部屋にいんだよ」 「いや、ちょっと頼みたいことがあって」 「…………医師以外の仕事をさせろってのは駄目だ」 「なんでだよ」 「お前みたいな見目が異様で怪しい奴に、屯所の中を歩き回せるようなこと、わざわざさせるわけねぇだろ」 「それもそう……だけどさ」 机に向かって、私を見ようともしない土方の背中を見つめていたが、ついに顔を俯かせた。 役に立つために来たというのに、ただの邪魔者で異物という存在と言うのは……なんとも歯痒い。 どうにかして役に立てないものか……。 いや、大人しくしていることの方が役に立つのか? 「お前はどうして、そんなにも雑用をしたがるんだよ」 「それは、あんたらの役に立ちたいからで」 「聞き飽きた」 「……」 バッサリ切り捨てられ、言葉が後に続かない。 それに、冷めた口調と態度の土方になにを言っても無駄だろう。 彼の背中から、早く出ていけ、というオーラが溢れ出していた。 それを見て一瞬、heart breaksしかけたが、気を取り直してもう一度頼んでみた。 ここで諦めていては、前の世界で死んだ意味も、あの事件を乗り越えていこうとした私の覚悟も水の泡だ。
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