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そんなことを考えていれば、長身の細身の男──新見は、目つきを鋭くして見据えてきた。
「貴様、なぜここにいる」
「ついこの間、医師として入ったんだよ」
「医師として入隊……?ちっ、土方か。芹沢さん、これはあいつらが隠してたってことになるんじゃないか?」
「そうみたいだな」
新見は隠すことなく舌打ちをすると、彼の斜め前にいる大柄な男──芹沢を見た。
多少怒りを露わにしている新見と比べ、芹沢は至って冷静で、むしろどうでもいい、とでも言うように、明後日の方向を向いていた。
すると、彼らの後ろにいた小柄な男──平山が、芹沢の前にまで出て喚き散らした。
「土方の野郎、ふざけやがって!!貴様も、第一に芹沢先生へのご挨拶が礼儀ってもんだろ。なぜ来なかった!!」
「あんたがそれを訊くか?」
睨んでくる平山に、私も憎悪を込めて睨み返した。
それでようやく彼もあの時のことを思い出したのか、少し怯んだが、それでも睨み続けてきた。
そう、この平山は、芹沢派が風月亭に来た夜、鈴を襲った張本人だ。
この男は、鈴がどれほど恐怖し、傷ついたのかを理解していない。
だから、ついさっきまで忘れていられたのだ。
それが解ると、余計に怒りが増した。
殴りつけたくなる衝動をなんとか抑えて、ただ、睨む視線により一層憎しみを込めた。
「……ちっ。芹沢先生、お先に失礼します」
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